SLT(選択的レーザー繊維柱帯形成術)について
(以下、エレックス株式会社 のパンフレット(監修:福井県済生会病院 眼科 新田耕治先生)より抜粋)
SLTとは、
選択的レーザー線維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty)のことで、眼圧を低下させる効果の高い レーザー治療法で緑内障に対して行います。このレーザーは低エネルギーの短パル スを房水の流出経路である線維柱帯に照射します。この処置 により体内の自然治癒反応が引き起こされ房水の排出機能が 改善し、眼圧を下げます。非常に低出力であるため、眼内 構造に損傷を及ぼすことはありません。
緑内障とは?
緑内障は、現在日本人の中途失明原因の第一位であり、40 歳以上の20人に1人の割合で患者様がいるとされています。 緑内障になると自覚症状のないまま緩やかに視野欠損が進行 し、自覚症状が現れた時にはすでに相当進行している場合が ほとんどです。
治療の基本は眼圧を下げること。
緑内障は視神経が弱って視野が狭くなる病気です。眼圧が高 く神経が傷んでいく場合と眼圧が正常ですがもともと視神経 が弱く傷んでいく場合があります。いったん障害を受けた 部分は二度と元には戻りません。そのため緑内障の基本治療 は視神経が傷まない水準まで眼圧を下げることになります。
緑内障は一生管理が必要です。
緑内障は治療を行えば治るという病気ではありません。高血 圧と同様にあなたに合った目標眼圧を定め、薬(点眼・内服)、 レーザー治療、手術などを用いてこれ以上進行しないように 治療することが必要です。従って、必ず定期的に眼科を受診 し、一生管理していくことが非常に大事になります。
緑内障の原因:眼内の房水は、角膜と水晶体の健康を保つために、たえずバランスのとれた 速度で産生・排出されて います。この排出が障害されると、視神経が弱って、開放隅角緑内障(もっとも多くみられる緑内障のタイプ)を発症します。
解決法:SLTでは、低エネルギー光の短いパルスを、眼の特定細胞内にあるメラ ニンに照射します。この処置によって体内の自然治癒反応が引き起こされ、これらの 細胞の再建に向けて働きます。この再建プロセスは房水の排出 障害を改善し、眼圧を低下させます。
第一選択治療としてSLTを選んだ場合の メリットは?
1回のレーザー治療で2~3年間効果が持続しますので、点眼治療のような紛らわしさはありません。 また、2~3回繰り返し治療が可能なため、しばらくの間点眼 なしで管理できる可能性があります。ただし、効果に個人差 がありますので、レーザー治療後に十分な眼圧下降効果が認められなければ点眼治療など別の治療を追加する必要があります。
レーザー治療のSLTについて Q&A
Q. SLTに痛みは伴いますか?
A. いいえ。痛みはありません。(個人差あり)
Q. SLTの治療時間はどのくらいですか?
A. 患者様の症状や治療範囲によって異なりますが、通常~10分程度で終了します。
Q. SLTは入院が必要ですか?
A. 通院で行いますので入院は不要です。
Q. SLTで効果がなかったらどうすればよいですか?
A. SLTを治療の第一選択にした場合、高い確率で効果が期待できます
しかし、第二、第三選択の治療の場合、 有用である確率は低下します。中には効果のあまりない方もいます。その場合、点眼を更に追加したり、手術を 考慮します。
緑内障の治療初期における点眼とSLTの比較表
名称 | 点眼 | SLT |
治療方法 |
治療方法、毎日決まった時間に点眼を行う |
治療前に点眼麻酔をし、専用のレンズを使用し レーザーを照射する |
費用(3割負担) | 点眼薬 2年間」 (3割負担)」 36,000~72,000円 | レーザー治療代 58,000円前後(両眼) |
長所 | ・手軽に始められる ・一回の診察代が安い ・保険適応 |
・非侵襲的方法であるため繰返し治療可能 ・就寝時間帯眼圧変動の抑制が期待できる。 ・一回の治療で2~3年 間効果が期待できる (個人差あり) ・毎日点眼の煩わしさがない ・保険適応 |
短所 | ・毎日の点眼が面倒 点眼薬によるアレルギーが生じる場合がある |
・一回の施術費用が高い ・全ての方に選択可能な治療ではない |
副作用 | ・結膜充血 ・眼瞼色素沈着 ・睫毛多毛 ・ 上眼瞼のくぼみ ・心不全 ・呼吸困難(喘息の方は 禁忌) ・妊娠中、授乳中の方へ の使用は安全性が 確立されていない」 |
・結膜充血 ・かすみ ・重圧感 ・眼圧上昇 (上記全て一過性のもの) |